(1)接触刺激性の雌フェロモン:センノキカミキリの雄による雌認知は,雌体表から出る接触刺激性フェロモンによるもので,触角と小顎髭で感受する.キボシカミキリは雄が雌フェロモンを受容し,交尾行動を示す.この雌フェロモンは体表炭化水素の主要成分で,日齢とともに蓄積されるのは,フトカミキリ亜科の後食による性成熟.
(2)近接距離誘引性の雌フェロモン:ラミーカミキリは午前中に摂食し,このとき雌が3cmほどの距離からフェロモンで雄を誘引する.スギカミキリの雄は徘徊しながら10cm以内に雌がいると接近し交尾に至るが,これには揮発性フェロモンが関与している.
(3)遠距離誘引性の雌フェロモン:南米に分布するMigdolus fryanus はサトウキビの害虫で,雌(飛翔することができない)は地面でコーリングし,遠距離の雄を誘引する. 蛾類によく知られる方法だが,カミキリムシでは本種が唯一.
(4)雄フェロモン:ブドウトラカミキリは遠距離で雄→雌,近距離で雌→雄の2段階のフェロモン使用.雄フェロモンは前胸背板から分泌される.他のトラカミキリ類についても雄フェロモンの分泌または前胸背板に分泌孔が確認される種が多い.雄フェロモン発達の仮説として,衰弱木・伐倒木を寄主として利用する種と違って健全木を利用する種は雌雄の出会いの場がないためで,健全木/伐倒木利用で配偶行動が異なる可能性がある.フトカミキリ亜科ではマツノマダラカミキリが雄フェロモンを使用し,近接距離(10cm以内)で雌を誘引する.
最後の雄フェロモンの記述について,衰弱木・伐倒木ユーザーの雄は産卵場所である枯死・衰弱部位から出る特定の植物由来の匂いを頼りに雌にたどり着くことができるのに対し,健全木ユーザーは産卵場所が限りなく広範囲なので雄が匂いを出して雌を呼ぶようになったのではないか,という話らしい.
(2020/01/14)
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